ブータンに翻るお礼/岩下愛さん – Thanking Bhutan (Asahi)

(This article is about the visit of Ai Iwashita to Bhutan and Pelkhil School in March this year, marking the one year anniversary of the Great Tohoku Earthquake in Japan last year. She came to express gratitude for the support of the Bhutanese people to the people of Japan.)

2012年06月18日

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熊本県出身。地元の高校を卒業後、外国人に日本語を教える先生になりたいと国際教養大に進んだ。1年前の震災時は訪問先のオーストラリアでボランティアをしていた。ヒマラヤ山脈南麓の国ブータンの小学校の校庭に今年3月、東日本大震災の被災者のメッセージが書き込まれたこいのぼりが泳いだ。届けたのは秋田市の国際教養大学3年、岩下愛さん(21)。「震災支援のお礼の気持ちをこいのぼりに託して送りたい」。思いが結実した。世界中を駆けめぐった津波の映像に言葉を失った。「いまの自分にできることは何か」。そう考え、現地の小学校で被災地の子どもたちへの応援メッセージを 募った。すると150人の温かい言葉が集まった。「被災地へ届けよう」。4月中旬に帰秋後、すぐに被災地支援を行うNGO団体「RASICA」(秋田市) に参加。宮城県石巻市を訪れ、オーストラリアからのメッセージを避難所の小学校体育館に飾った。「オーストラリアに日本らしいお礼ができないか」。支援物資の中に、こいのぼりを見つけた。「子どもの成長を願うこいのぼりに、日本の気 持ちを込めよう」。被災者に寄せ書きをお願いした。「遠いところからありがとう」「避難所の雰囲気が和やかになった」。こいのぼりはそんなメッセージで いっぱいになった。「人の心をつなぐのもボランティアの一つ」。そう確信した。

同じころ、インターネットでブータン国内の支援活動を伝える記事を見つけた。「国民総幸福量」で知られるブータンは昨年3月、いち早く日 本へ約100万ドルの義援金を送っていた。昨年11月にはワンチュク国王が自ら「被災者と心を一つにする」と、ジツェン王妃を伴って福島県相馬市を訪れ た。そんな支援を知り、「同じようにこいのぼりを送ろう」。

被災者の気持ちを記したこいのぼりをブータンに届ける企画を練り上げ、国際交流のアイデアを競う「学生国際交流プロジェクト」(日本旅行 業協会主催)に応募した。オーストラリアでの取り組みなども評価され、寄せられた66点の中で最優秀企画に選ばれ、ブータン訪問のチャンスを得た。岡山県 のメーカーが無償提供してくれた大小12匹のこいのぼりを手に石巻市や岩手県大船渡市などを回り、言葉を集めた。

そしてブータンへ。首都ティンプー郊外の小学校で、こいのぼりを掲げた。空に泳ぐ姿を見た子どもたちから大きな拍手が起きた。「うれしくて信じられませんでした」

滞在中、活動が現地の新聞に紹介されると、国王から「震災1年の11日に追悼式を開きます。参加しませんか」との連絡が入った。式当日、 首都の寺院に両国関係者50人が集まった。式の終わりに国王が岩下さんのもとに歩み寄ってきた。「あなたの取り組みに心が動かされました」。身震いが止ま らなかった。

哀悼の意を込め、訪れた小学校は毎年3月11日、こいのぼりを揚げてくれることになった。でも「まだ終わりではない」と思う。ブータン で、子どもたちに日本へのメッセージを凧に書いてもらった。ブータンの公用語のゾンカ語で「希望をすてないで、幸せになってください」「いつか日本に行っ て、友達になりたいです」。子どもたちの優しい言葉であふれる凧を国王が訪れた福島県相馬市の子どもたちに届け、一緒に揚げたいと考えている。

「こいのぼりや凧をきっかけに世界の子どもたちをつなげたい」。感謝のメッセージのリレーはまだ続く。(大久保貴裕)

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